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千葉家庭裁判所 昭和53年(家)1136号 審判 1978年9月30日

申立人 石田俊夫

未成年者 石田和利 外一名

主文

本件申立はいずれもこれを却下する。

理由

本件申立の要旨は、申立人は昭和三六年四月一一日田中まさ子と婚姻し、その間に長男和利(昭和三七年三月一七日生)二男大志(昭和四五年三月二四日生)をもうけたが昭和四九年九月六日上記二子の親権者を母まさ子と定めて協議離婚をした。まさ子は離婚前後に亘つて二子と共に石川県小松市所在の実家に帰住して同所で生活を続けていたが、昭和五一年四月三日死亡したため二子につき後見が開始し、申立人が二子の後見人に選任された。申立人は昭和四九年一〇月二三日尾崎英子と婚姻したが後見人に就職後二子を引取つて監護養育している。申立人は二子の実父であるからこの際後見人であるよりも親権者として二子の監護養育をしたいので本件申立をした、というのである。

本件記録編綴の各資料および当庁家庭裁判所調査官の調査の結果を総合すると次の事実が認められる。

(1)  申立人は昭和三六年四月一一日田中まさ子と婚姻しその間に長男和利(昭和三七年三月一七日生)二男大志(昭和四五年三月二四日生)をもうけたが、その後昭和四八年八月頃まさ子は老齢の両親を扶養すべく長男和利および二男大志を伴つて実家である石川県小松市○○町○×××番地に帰住したため、申立人も○○○○に転勤を希望したが実現し得ず、止むなく別居生活を続けていたこと、然しその後申立人とまさ子との間が不和となり両名は昭和四九年九月六日長男和利、二男大志の親権者をまさ子と定めて協議離婚した。

(2)  右に先だつ昭和四九年六月頃申立人はまさ子との離婚を前提として尾崎英子と婚約していたため、上記まさ子との協議離婚が成立した後の昭和四九年一〇月二三日申立人は尾崎英子と婚姻(挙式は同年九月二八日)したが、申立人はまさ子と離婚後も未成年者和利および大志の養育費として二人分月額金三万円ないし金五万円をまさ子宛送金していた。

(3)  まさ子は上記協議離婚後未成年者二名と同居しその監護養育に当つていたが、昭和五一年三月三〇日自動車交通事故に遭遇し同年四月三日死亡したため、未成年者二名につき後見が開始した。右まさ子の死亡により申立人はまさ子の両親の同意を得て昭和五一年四月九日未成年者二名を引取つて千葉市内に戻り、それ以来妻英子とともにその監護養育をしている。

(4)  申立人はまさ子の死亡に基き昭和五一年五月一七日当庁あて未成年者二名のため後見人の選任を求め同年八月二三日みずから後見人に選任されたのであるが、まさ子に対し交通事故の損害賠償金が合計一九、五六八、四六〇円支払われるに当り申立人は未成年者二名の法定代理人として合計約金一、二〇〇万円を受領した。

(5)  申立人は右合計約金一、二〇〇万円(未成年者一名につき約金六〇〇万円)を受領したが、その後未成年者和利取得分から金五一七万円を支出しこれにみずからの資金および借入金等合計金五四〇万円を加え合計金一、〇五七万円で千葉市内に宅地を求め(申立人と和利との二分の一の共有)、引続き同地上に申立人名義で約一、三〇〇万円相当の住居の建築を計画していること、未成年者二名所有の上記金員の残額は和利名義で合計金一七五万円、大志名義で合計金一七〇万円の定額郵便貯金となつているほかは申立人および英子名義の貯金および国債公社債等になつているがその詳細は明かではなく、この点につき申立人は最終的には未成年者二名が相続することになるものであり、かつ名義の分散は税金対策のためであると述べているにとどまり多額の未成年者二名の所有に属する残現金の分散状況、保管状況は明瞭とは認め難い状況である。

(6)  申立人および英子と未成年者二名との親和状況は問題視すべきことはない。

およそ以上の事実が認められ、右認定を覆えすに足りる資料はない。

上記認定の事実によれば申立人は未成年者二名の実父であるから後見人としてではなく親権者としてその監護養育に当りたいとの心情を有することは当裁判所も充分理解し得るところであるが、既に後見人として申立人が選任されていること、未成年者二名が多額の現金を有しておるためその財産管理については適切な監督措置をとり得る余地を残しておくことは未成年者二名の福祉に合致するところであり、他方申立人の未成年者二名に対する身上監護については何ら問題とすべきことはないから身上監護の必要上から申立人を親権者としなければならぬ特段の事情は窺えない。

してみれば本件については未成年者二名が或る程度成長する時期まで家庭裁判所における後見監督の途を保有しておくことが未成年者二名の福祉に合致するものと判断し、本件申立はこれを却下すべきものとし主文のとおり審判する。

(家事審判官 安達昌彦)

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